OCW国際会議 (Hasegawa)

OCW国際会議OCW(OpenCourseWare)とは,2001年にMITによって開始された,インターネットにおける講義情報公開プロジェクトです.日本においても2005年に発足した日本OCW連絡会を中心として様々な活動が展開されています.今回は,世界及び日本のOCWの現状を調査する目的で,2006年4月20に京都大学で開催されたオープンコースウェア国際会議に参加しました.会議はOCWの中心的存在であるMITの現状紹介,日本及び世界におけるOCWの動向に関するパネルセッション,国内外のOCWに関するデモセッション等で構成され,OCWの“今”をつかむ上では格好の場となりました.

OCWが掲げる大きな目的に「知(教育資源)に対するオープンなアクセス」を提供することがあります.こうした目的は大学にとってもちろん非常に重要な意義を持ちますが,初めてこのプロジェクトについて聞いた時から,(特に本学のような小さな大学において)実際に推進する上ではより具体的な目的設定が必要なのではないかと考えてきました.こうした観点から各大学における取り組みを聞くと,(やや暗黙的ではありましたが)教育改革/FD(Faculty Development)の一環であるとか学内情報教育環境との連携であるとか,一種の広告効果を期待する等といった大学の現状とリンクした目的がやはり一つのカギとなるようでした.振り返って本学においてこうした目的を設定することができるかどうか…,これはOCWに参加するしないにかかわらずもう少し詳細に考えてみる必要があると思います.他の大学と同じことをやっていては埋没するだけですが,本質から外れたところをターゲットにおいても継続することが難しいでしょうから.個別の課題としては,やはり著作権と費用の問題が日本においては大きいようです.著作権については,海外ではOCWのコンテンツはいわゆるCreative Commons Licenseを適用する事例が多いようですが,日本ではまだまだこれからといった印象でした.このあたりは全世界に向けて発信するウェブの世界と日本国内の法律の兼ね合いが難しくまだ数年の議論は必要になるところだと思いますが,個別の取り組みについては参考になる点も多くありました.また,費用面ではMITの事例のように財団からの大規模なサポートを期待することが難しい日本においては,Sustainablity(持続可能性)というキーワードの中で,いかに継続するための費用を確保するかが重要となります.現在の取り組みの多くは大学における他のプロジェクトの一環として予算確保しているケースが多いようでしたが,こうしたアプローチは必ずしも継続的運用に向いていないという問題もありそうで,なかなか各大学とも悩ましいところではないかと思います.また,時間的・費用的なコストのかなりの部分が著作権処理への対応であるとのことで,それこそ地域や国内でコンソーシアムを形成し,これらの対応を集中して処理できる機関を作っていくことが必要なのではないかと感じました.

最後になりますが,この国際会議が開催された4月20日に日本OCWコンソーシアムが正式に立ち上がったというアナウンスもありました.現在は全部で10機関が参加していますが,これから徐々に参加機関を増やしていきたいとのことでした.本学として参加すべきかどうかはどこに独自性を出せるかにかかってくると思いますが,大学の社会貢献という観点からは非常に興味深いアプローチなので,参加の可否にかかわらず今後も情報収集を進めたいと考えています.

(2006.4.25 長谷川)